トランスポーターを知れば糖質+脂質が太る理由がわかる

糖質と脂質を同時摂取すると太りやすいと言われていますが、この理由を知るためには、細胞にあるトランスポーターの種類と作用条件について知っておく必要があります。

このPDFに書かれている内容を元にブドウ糖と脂肪酸(ケトン体など)、それぞれのトランスポーターの働きや作用条件、各トランスポーターが無い場合に起こる臨床試験の結果などから糖質と脂質の吸収に関する理解を深めていきます。

トランスポーターとは

トランスポーターとは、細胞に必要な物質を取り込むための器官です。

ブドウ糖、たんぱく質、脂肪酸(脂質)を細胞内に取り込むトランスポーターがそれぞれ存在しています。

ブドウ糖と脂肪酸のトランスポーター

  • ブドウ糖を運ぶ:GLUT4
  • 脂肪酸を運ぶ:CD36

ブドウ糖や脂肪酸のトランスポーターは上記以外にも複数ありますが、活動のメインとなっているのは「GLUT4」と「CD36」の2種類のようです。

トランスポーターが働く条件

細胞内に糖質や脂質を運ぶトランスポーターは、以下の2条件で働きます。

トランスポーターの作動条件

  • 筋収縮が起こった時
  • インスリンが作用した時

筋肉が収縮しブドウ糖やケトン体が消費された分は、自動的に吸収できるようになっています。

内蔵はどうなる?

筋収縮で自動的に取り込まれるなら、おそらくは、内蔵もエネルギーを消費した分は、自動で取り込まれるのではないかと思います。

インスリンは、糖尿病など血液関連でよく耳にするワードなので、細胞内にブドウ糖や脂肪酸を取り込むには、インスリンの介入のみが絶対条件のように思われますが、実際は違うことがわかります。

筋収縮によるトランスポーターの働き

筋肉収縮はトランスポーターが作動する条件の一つであり、筋肉が消費した分のエネルギーは、トランスポーターが自動的に吸収するよう働きます。

減ったら補うという単純な話です。

筋収縮によるトランスポーターの働きで、わかりやすい例が心臓です。

心臓の拍動とトランスポーター

心臓のエネルギー源の割合的には、全体の7割が脂肪酸となっており、心臓が動く(筋収縮が起こる)度に、脂肪酸を吸収するCD36がメインで働きます。

心臓がケトン体をメインで消費しているという証明は、心臓の色からも明らかです。

心筋が赤い理由

筋肉の中でもミトコンドリアによるTCA回路が多い場合は、酸素を消費することで赤くなり赤筋と言われます。筋肉の赤色は、ミオグロビンという酸素を貯蔵できるたんぱく質によるものです。

もしも、心臓がブドウ糖をメインで消費していたとすればブドウ糖はどんどん消費されるので、血糖値が高くなることは恐らくないでしょう。

酸素も必要なくなるので、呼吸回数が減るとも言えます。

また、解糖系ではピルビン酸(乳酸)を大量に生み出すことになるので、基礎代謝の中でもエネルギー消費量の多い心臓がブドウ糖をメインで消費しているとは考えにくいものです。

インスリンによるトランスポーターの働き

トランスポーターが作動するもう一つの条件は、細胞のインスリン受容体を刺激することで起こります。

一般的に認知されている、インスリンの介入によるエネルギー源の取り込みですが、インスリン受容体の刺激をトランスポーターに伝えるのが「kinase(キナーゼ)」という伝達系です。

インスリンによる作用でも筋収縮も同様にキナーゼの伝達によりトランスポーターを刺激します。また、それぞれのトランスポーターに働きかけるキナーゼが存在しています。

kinaseの種類

  • 筋収縮:AMPキナーゼ→(GLUT4、CD36)
  • インスリン:PI3キナーゼ→(GLUT4、CD36)

筋収縮が起こったらAMPキナーゼがGLUT4とCD36に働きかけ、インスリンの刺激を受け取った時は、PI3キナーゼがGLUT4とCD36に働きかけるという流れです。

この辺をもう少し深掘りしてみます。

筋収縮からのキナーゼ伝達

筋肉が収縮した場合、AMPキナーゼはブドウ糖が消費されたらGLUT4、ケトン体が消費されたらCD36に伝達します。

  • 筋収縮→PI3キナーゼ→GLUT4
  • 筋収縮→PI3キナーゼ→CD36

伝達を受けた各トランスポーターは、それぞれ必要なエネルギー源を取り込むよう動きます。

インスリン作用によるキナーゼ伝達

高血糖となりインスリンの追加分泌が起こると、細胞がインスリンを受容しPI3キナーゼがそれぞれのトランスポーターに知らせます。

  • インスリン受容→PI3キナーゼ→GLUT4
  • インスリン受容→PI3キナーゼ→CD36

インスリンが作用すると、ブドウ糖の取り込みだけでなく脂肪酸(ケトン体)の取り込みも促進します。

ここが糖質+脂質で太りやすい理由です。

インスリンが介入することで細胞内に脂肪酸の取り込みが促進され、脂肪細胞から分解された遊離脂肪酸が再び吸収されてしまう可能性です。

血液中の遊離脂肪酸濃度には限界があると考えられているので、インスリンの追加分泌が無ければ、脂肪酸の吸収は緩やかになると考えることができます。

もう少しかみ砕いて説明していきます。

糖質と脂質で太るのはインスリン作用が原因

まず、血液中の脂肪酸(遊離脂肪酸)には、溶け込める濃度に限界があり、腸管から吸収される量が調整されているというのが通説です。

脂質だけ摂取した場合は、血液中の脂肪酸濃度限界に到達した時点で吸収が止まることに対し、インスリンが介入することでCD36が活性化し細胞内に脂肪酸を吸収してしまうと腸管からの脂肪吸収が促進されるという原理です。

遊離脂肪酸濃度の話は半信半疑ですが、一応この前提を通しておきます。

こうして、高血糖となりインスリンが追加分泌されると、GLUT4とCD36の両トランスポーターに働きかけることで、ブドウ糖も脂肪酸も吸収するから脂肪が蓄積しやすいということです。

これが、糖質+脂質が太りやすい理由です。

CD36が無いマウスによる実験結果

引用した資料によると、脂質を取り込むCD36が無いマウスやヒトの血液を調べたところ、以下のような結果となっていました。

CD36が無いマウス

  • 脂肪酸が取り込めない
  • 血液中の脂肪の数値が諸々上昇
  • 血糖値が下がった

細胞にCD36がなく脂肪酸を取り込めない状態のマウスは、血液中の脂質は減らなかったという、妥当な結果です。

反面、血糖値が下がったということは、GLUT4の働きは活発になったことを示します。

CD36が無くて脂肪酸を取り込めないマウスは、脂肪酸が取り込めない代わりに、ブドウ糖の取り込みが強化されたことがわかります。

CD36がないヒトによる実験結果

CD36がないヒト

  • 脂肪酸の消失速度が著しく遅延
  • 血糖値も高い状態が続いた
  • インスリン抵抗性になりやすい
  • 糖新生を起こしたと思われる

CD36の無いヒトの場合は、脂質とブドウ糖の両方が多かったそうです。

同じ条件のマウスは、ブドウ糖が吸収されたのに対し、ヒトの場合は、ブドウ糖も多かったということになります。

なぜ、違いが出たのでしょうか?

おそらくは、肝臓に脂肪が蓄積しているという条件によってインスリンの分泌が抑制されてブドウ糖の吸収がストップし、ケトン体の生産が止まらなかったのではないでしょうか。

いわゆるケトアシドーシス状態です。

CD36の無いヒトの場合は、使われなかった脂肪酸が増えて肝臓の処理が渋滞しているような状況が原因だったのかもしれません。

後は、単純にマウスが無自覚に動き回っていることに対し、ヒトは、臨床データを取るために安静状態で過ごしていたことも関係しているのかもしれません。

脂肪酸が多いことでインスリンの分泌がストップしている上に筋肉を動かさいとなれば、エネルギーの消費量は少なく吸収が起こるハズがないと考えることができます。

結果、ブドウ糖も減らなかったのではないでしょうか。

糖新生が起こる条件

血液中の余剰なブドウ糖が消え血糖値が安定すると、ケトン体をエネルギー源として確保するために材料となる脂肪酸が肝臓に増えます。

糖新生が起こった理由

  1. 肝臓に戻ってくる脂肪酸が多い
  2. 脂肪酸の代わりにブドウ糖が必要
  3. 血糖値関係なく糖新生が促進

肝臓に脂肪酸が増えたという状況の裏を返せば、血液中のブドウ糖が少ない状態が成立することになりますが、インスリンが分泌していないのでブドウ糖が吸収されず、高血糖のまま糖新生が促進したのではないかと思います。

このあたりの解釈は難しいところですが、肝臓に脂肪酸が集まってくることによって起こる、これまでの生体活動では起こることの無かったエラーなのかもしれません。

CD36が無いマウスに高糖質食与えてみたら?

CD36が無いマウスに高糖質食を与えたところ、インスリンの感受性が高くなったそうです。

反対に、高脂肪食を与えたらインスリン抵抗性が強く出現したそうです。

おそらくは、高脂肪食によって肝臓に脂肪が増えインスリンの分泌が強制的に抑えられたのだろうと思います。

CD36が多いマウスで実験

この場合は、以下のような結果となったそうです。

CD36が多いマウス

  • 脂肪酸の取り込みが促進された
  • 血液中の脂質が諸々低下
  • 血糖値は上昇

CD36が多いマウスは、血液中から脂肪酸の取り込みが良くなった代わりに、ブドウ糖の取り込みは悪かったようです。

しかし、ヒトの場合は、脂質を取り込めないだけでなくブドウ糖までも取り込めず、インスリン抵抗性となる。

CD36が無いと血液中が脂肪酸で溢れ、肝臓に取り込まれる脂肪が多いことでインスリンの分泌が抑えられるのと同時に、脂肪酸が多いという条件によって糖新生が促されたため、血液中の脂肪酸もブドウ糖も多い状態となったのではないかと思えてなりません。

血糖値が高かろうが低かろうが関係なく、肝臓の状態によって左右するのだろうと思いました。

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