なぜ妊娠中はインスリン抵抗性が起こる?

女性の7~9%が妊娠糖尿病になっているそうですが、詳しい原因は解明されていません。
分かっていることは、胎盤からインスリンの作用を抑制するホルモンが分泌され、血糖値が下がりにくくなるということです。
なぜ、妊娠中にインスリン抵抗性が増すのかメカニズムを追ってみました。
インスリンに抵抗する胎盤

妊婦すると、胎盤からインスリンを抑制する複数のホルモンが分泌されるようになります。
インスリンを抑制するホルモン一覧
- ヒト胎盤ラクトーゲン
- プロラクチン
- プロゲステロン
- たんぱく質分解酵素
このうち、ヒト胎盤ラクトーゲンは妊娠6週ごろから血液中で測定可能できるようになり、胎盤の増大に伴って妊娠34~36週ごろまで次第に増えていきます。
なぜインスリンの作用を抑えようとするのか?

妊娠中、胎盤では、何らかの理由でインスリンの働きを抑える必要がある状態です。
しかし、妊婦の血糖値が高いことを確認した産科医は「これは、まずい!」と、糖尿病を過剰に心配した結果、インスリン分泌薬や投与で血糖値を下げようとします。
なぜ、このような矛盾が起こるのか?
この矛盾を解決するヒントとして、赤ちゃんは高濃度のケトン体状態にあるという証拠がヒントとなります。

ケトン体とは、脂肪酸(皮下脂肪、内臓脂肪)から作られる体のエネルギー源です。
では、妊娠前と後で、どのような違いがあるのか確認してみましょう。
インスリンが効く状態と効かない状態
妊娠していない時の体内

普通は、血糖値が上がればインスリンが分泌されて脂肪細胞に押し込みます。
インスリンは、ブドウ糖を脂肪細胞に入れる仲介業者のような存在です。
妊娠すると?

妊娠すると、インスリンの働きを強制的に押さえ込みます。
インスリンの働きを無効化するメリットは、脂肪酸が母親の細胞に再吸収されてしまうことが減り、胎児に必要なケトン体を十分に送り届けられる状態が成立することです。

インスリンの介入による脂肪の蓄積を防ぐことで、遊離脂肪酸は肝臓まで運ばれ分解されケトン体となり胎児の栄養源となります。

これで、無事にケトン体が届くようになります。
そして、妊娠中の高血糖を解決するには、以下の問題をクリアしなくてはなりません。
- インスリンが意図して無効化される理由の解明
- 糖質を摂り過ぎていた食事を改める
妊娠中は、インスリンの効き目が弱ることがわかっているのに、その理由を追及せず、「高血糖=人体に害」という前提のみを選択した結果が「妊娠糖尿病」です。
解決するには、これまで糖質を過剰に摂取していたという点を改めることです。
妊娠糖尿病の治療食
しかし、妊娠糖尿病になっても糖質を過剰に摂取を強いられるのが現代医療です。

まず、妊娠糖尿病の治療法を確認してみると、以下のような食事バランスにより血糖コントロールを試みるそうです。
- 炭水化物:50~60%
- たんぱく質:15~20%
- 脂質:20~25%
このように、糖質過剰になっています。
インスリンの働きが意図的に抑えられているという現状があるにも関わらず、血糖値を上げる栄養バランスです。
「高血糖=ブドウ糖が十分な状態」であるにも関わらず、「体にはブドウ糖が必要」という拡大解釈によって、現時点で血糖値を高めているブドウ糖の存在を無視した食事内容と言えます。
そして、血糖値が上がると、「血糖値を下げなくては危険、インスリンを使いましょう」と、妊娠中は働きが無効化されるインスリンの追加分泌を治療と見なしているのです。
この矛盾が伝わると良いのですが・・・。
理想的な食事バランスは?
では、理想的な食事バランスはどのくらいなのでしょうか?

まず、からだの成分バランスは、おおよそ以下のようになっているそうです。
- 水分 : 62.6%
- たんぱく質:16.4%
- 脂質:15.3%
- ミネラル:5.7%
- 糖質:1%未満
この割合を参考に、栄養の摂取バランスを考えてみました。
- たんぱく質:40~55%
- 食物繊維:20%前後
- 糖質:15%前後
- 脂質:15%前後
運動せずに毎日三食では十分なエネルギー源を確保できるので、たんぱく質を基本として、炭水化物と脂質は控えめにするのが良いと思います。
脂質は、動物性を控えて植物性にした方が安心です。
いずれにしても、妊娠中に限って空腹時血糖値が上がっている場合は、「体に必要なブドウ糖が余っている状態」なので、現時点の血糖値を参考にしながら糖質の摂取量を調整するのが良いと思います。
胎盤では、インスリンの働きを抑えるホルモンが複数出ているという事実を踏まえて、インスリンに頼らず血糖値の安定化を目指しながら、胎児のエネルギー源となる脂肪を増やせる食生活が必要と言えます。
関連ページ