ブドウ糖が優先されてきたのはなぜ?

よく見かける3フレーズ

  • 体のメインエネルギー源はブドウ糖
  • 脳のエネルギー源はブドウ糖だけ
  • 糖尿病になってもブドウ糖摂取は必要

これらの言葉には、ずっと違和感を感じていたのですが、具体的に何が間違っているのか知る術を持ちませんでした。

ブドウ糖神話はどこまで本当なのか、ブドウ糖の性質を紐解きながら頭の中を整理してみます。

ブドウ糖がメイン扱いされた理由

私たちの生態活動を支えるエネルギー源には、ブドウ糖とケトン体という2種類があります。

ブドウ糖とケトン体の大きな違いは、食べ物からいくらでも摂取できるブドウ糖に対して、体内の脂肪酸を分解しないとケトン体は作られないことです。

近頃は、MCTオイルを飲めば、肝臓でケトン体を直接作られるという情報も浸透していますが、それも、ほんの数年前に話題になってきたばかりの新情報です。

なぜブドウ糖優先説が定着したのか?

  • 高血糖は短時間で治まる
  • インスリンが分泌され速やかに吸収される
  • 食べ物にたくさん含まれていたから

体内で速やかに処理されていることから、「必要性が高い」と認識されています。

これらの条件を都合良く曲解した結果がブドウ糖メイン説と言えそうです。

ケトン体は目立たない存在

一方のケトン体は、体内の脂肪酸を肝臓で分解しないと生産することができません。

また、ケトン体の生産量を増やすためには、「血糖値が正常に戻った状態=インスリンの作用が収まった状態」という条件が必要となります。

インスリンの有無が条件

血糖値が上がるとインスリンの作用によってすぐに処理が始まるブドウ糖に対し、インスリンの作用が収まった後に脂肪酸を分解して作るケトン体という違いがあります。

インスリンが作用している間は、体脂肪を増やすように細胞に働きかけている状態なので、ブドウ糖も脂肪酸(ケトン体の材料)も貯蔵に回されます。

運動による体脂肪の消費

有酸素運動を一定時間続けないと体脂肪の分解が始まらないと言われていますが、インスリンの作用が収まることに加えて、有酸素運動によってケトン体が消費されると、消費した分のケトン体は筋肉に無条件で取り込まれることが関係していると思います。

トランスポーターについて理解するとイメージしやすくなります。

トランスポーターの作動条件と太る理由

余ったブドウ糖は無駄にせず貯蔵

体にはブドウ糖のみを必要とする組織もありますが、ブドウ糖には粘着性があり、たんぱく質などに結合しやすい性質があるため、血液中に量が多いと害をもたらします。

ブドウ糖の吸収方法

  • グリコーゲンとして貯蔵
  • 筋肉の消費分を補給
  • インスリン介入による体脂肪化

一部は、グリコーゲンとなりブドウ糖が複数連なった状態で肝臓、筋肉細胞、脳のグリア細胞などに保管され、筋肉で消費された分は、GLUT4というトランスポーターの働きによって細胞内に入ります。

ブドウ糖もケトン体も相互関係によって必要性が補填されているため、どちらもなくてはならないものですが、グリコーゲン、または、筋肉の消費以外で余ったブドウ糖は、血液の恒常性を乱しているため、一定水準に戻すためにインスリンの介入による皮下脂肪化が進みます。

実際に体の中で「ブドウ糖は害だ」と認識していることはないと思いますが、本来は、果物などから摂取し食料の少ない冬を乗り越えるための脂肪蓄積手段と考えると、「インスリンの関与=取り過ぎた栄養を無駄しないよう貯蔵する方法」なのだと思います。

ただし、一時的な高血糖は、実りの多い時期に限られていたこと、常に移動による運動でエネルギーを消費していたことなどを加味すると、現代の食生活は、数百万年かけて自然界で身につけた対応基準をはるかに超えている状況であり、ブドウ糖を必要以上を取り続けた結果が血管の障害による合併症なのだろうと容易に理解できます。

ブドウ糖の行き先

これまで知り得た情報を元にイメージしたブドウ糖の処理順序です。

  • 1.食品から糖質摂取
  • 2.血糖値が上がる
  • 3.肝臓で肝グリコーゲンとして貯蔵
  • 4.まだ、高血糖。次へ↓
  • 5.筋グリコーゲン、脳グリコーゲンとして貯蔵
  • 6.まだ、高血糖。次へ↓
  • 7.膵臓にブドウ糖が取り込まれ、インスリン分泌開始
  • 8.筋細胞にブドウ糖の吸収促進
  • 9.脂肪細胞にブドウ糖の吸収促進
  • 10.まだ、高血糖。次へ↓
  • 11.肝臓で中性脂肪化

このように、優先度の高い組織から徐々に取り込まれ、高血糖が続くとインスリン分泌によって皮下脂肪として安定貯蔵。

さらに、インスリン分泌後も高血糖が続く事態となると、肝臓による中性脂肪化が始まるという流れです。

フェーズ1:グリコーゲン貯蔵

  • 肝臓:肝グリコーゲン(90~150g)
  • 筋肉:筋グリコーゲン(100~400g)
  • 脳:脳グリコーゲン(不明)

血糖値が上がると、まずは、肝臓や筋肉、脂肪細胞などに貯蔵されます。

フェーズ2:インスリン分泌による吸収

グリコーゲンとして貯蔵されなかったブドウ糖は、インスリンの働きによって細胞内に入ります。

膵臓から分泌されたインスリンが筋細胞や脂肪細胞のインスリン受容体に結合し、GLUT4(グルコーストランスポーター)の働きで細胞内にブドウ糖が取り込まれます。

インスリン抵抗性はなぜ起こる?

肥満になると、インスリンが分泌されても細胞内に吸収されない「インスリン抵抗性」が起こると言われています。

インスリン抵抗性の原因について調べてみると、内臓脂肪が過剰蓄積されると脂肪細胞から分泌される「アディポカイン」という物質の作用が強まることが関係していると言われています。

「内臓肥満=インスリン抵抗性」になるようです。

最近では、痩せ型でアルコールの摂取などない人でも、内臓肥満が増えていると言われています。

この解釈を踏まえて、インスリン抵抗性までの流れを予測してみました。

原因1:糖質の場合

  • 1.食品から大量のブドウ糖を摂取→血糖値上昇
  • 2.肝臓で肝グリコーゲン化→(飽和状態)
  • 3.筋細胞、グリア細胞にブドウ糖が入る
  • 4.まだ血糖値が高い→インスリン分泌
  • 5.筋細胞、脂肪細胞にブドウ糖を押し込む→(飽和状態)
  • 6.まだ血糖値が高い→ブドウ糖を肝臓で中性脂肪化→(飽和状態)
  • 7.まだ血糖値が高い→脂肪細胞からアディポカインの分泌増加
  • 8.インスリンが効かなくなる→インスリン抵抗性

まるで、満車のパーキングエリアです。

結果、肝臓で脂肪が作られるようになり、内臓脂肪が優先的に増え、アディポカインの作用が強まり、インスリン抵抗性が上がるという図式です。

原因2:脂質の場合

インスリン抵抗性が内臓肥満によるものならば、脂質の摂取も注意すべきです。

脂質を大量に摂取してもインスリンは分泌されないので、脂質(血液中の遊離脂肪酸)は、自然と吸収されやすいと言えます。

また、インスリンは筋肉のエネルギー源であるブドウ糖の余った分を皮下脂肪として貯蔵する働きがある点を踏まえると、インスリンの作用が無い状態の脂肪酸は、内臓脂肪に集中しやすいと言えます。

「脂質の摂取=内臓脂肪の蓄積」です。

人間ドックによる実感

糖質制限を本格化して5ヶ月経過した後、人間ドックでコレステロール異常と診断された私の実感が裏付けとなります。

糖尿病予防には、高血糖を防ぎインスリンの追加分泌を起こさない食生活ができれば良いというわけでなく、内臓脂肪を直接増やしやすい脂質の摂取にも気をつけなければなりません。

「脳のエネルギー源はブドウ糖だけ」ではない

未だに、脳のエネルギー源がブドウ糖だけという情報を見かけることがありますが、正しくは、ブドウ糖とケトン体の両方必要です。

思考を司るニューロンは、ケトン体や乳酸などをTCA回路を使ってエネルギーを取り出します。

酸欠になったら思考が止まり次第に頭がクラクラしてくるのは、ニューロンがTCA回路で動いている他でもない証拠なので、ブドウ糖ではないことがわかります。

ただし、脳のグリア細胞はブドウ糖のみを消費します。

理由は、各細胞に酸素を届ける赤血球と同じように、酸素やケトン体を自己消費してしまわないためであり、ブドウ糖を分解してエネルギーを取り出した際に出る副産物のピルビン酸(乳酸)をニューロンに渡せるからと考えるのが妥当です。

2種類のエネルギー生産方式

TCA回路

細胞には、ケトン体などを商品してエネルギーを生み出すTCA回路と、ブドウ糖を分解してエネルギーを取り出す解糖系があります。

解糖系

解糖系では、副産物としてピルビン酸が発生します。

さらに、ピルビン酸は酸素の無い状況下では乳酸に変わります。

一度に生み出すエネルギー量で考えるとTCA回路の方が高効率ですが、筋肉が高負荷になった時は、酸素供給が間に合わないので解糖系でブドウ糖を消費するというように得意不得意があります。

体でブドウ糖しか使えない組織がある

私たちの体では、以下の組織がブドウ糖しか使えません。

  • 脳のグリア細胞:ニューロンにはピルビン酸が必要
  • 赤血球:酸素を自己消費しないため
  • がん細胞:TCA回路を上手く使えないから

他にも、高負荷時の筋肉(速筋:白筋)もブドウ糖に依存割合が高いです。

グリア細胞

グリコーゲンをため込んでいるグリア細胞は、ブドウ糖しか消費できません。

脳の思考を司るニューロンがピルビン酸によるTCA回路でエネルギーを生み出しているので、グリア細胞がブドウ糖を消費することで利害関係が一致します。

赤血球

赤血球にミトコンドリアが存在しない理由は、体内のあらゆる組織に酸素を運ぶ働きをしているため、TCA回路でエネルギーを生産したら酸素を自己消費してしまうためと考えると理解が容易です。

がん細胞

がん細胞のブドウ糖消費割合は、正常な細胞の3~8倍と言われています。

糖尿病になると、糖尿病ではない人と比べて大腸がんは1.4倍、肝臓がんは1.97倍、すい臓がんは1.85倍も、がんを発症するリスクが高いことが日本糖尿病学会と日本癌学会による10年間の追跡調査でわかったそうです。

ブドウ糖が枯渇しない理由

筋肉に急激な負荷がかかったり、同じ動作の繰り返しで酸素の供給が間に合わなくなると、ブドウ糖の消費量が増えます。

特に、瞬発系の動きなどで一度に大量のエネルギーを生み出す時には、酸素供給量に依存するTCA回路は限界となり、解糖系に頼りブドウ糖消費量が増えることがわかります。

いずれにしても、高負荷による一時的な酸欠、もしくはスタミナ切れ(ケトン体供給不足)によって、筋細胞がブドウ糖を頼らざるを得ない状況が運動で起こりやすいとわかります。

一般的には、「体内のグリコーゲンは1日程度で枯渇し、その後ケトン体の生産が行われる」と言った情報がありますが、基礎代謝としての必要性を考えると、ケトン体生産は常に行われていると考える方が妥当です。

また、グリコーゲンが実際に枯渇しても、糖新生によって生み出すことができます。

糖質の摂取を極端に抑えた状態でも血糖値は70~80mg/dlで安定するので、食事によって補うことができなくても糖新生でまかなえるという確かな事実が存在します。

グリコーゲンは、すぐには減らない

そもそも、グリコーゲンの貯蔵量がすぐに枯渇する心配すらありません。

筋グリコーゲンの貯蔵量を踏まえると、ご飯一杯分程度のエネルギーを消費するためにジョギング1時間程度かかるとも言われているので、すぐに尽きることはありません。

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